2013年8月10日土曜日

扁桃摘出術(扁摘)のメタアナリシス いろいろ

扁桃摘出術は普遍的な手術なので、いろいろ研究あるんですが、不勉強だったのでまとめ。いくつか。要約からのみ。


Nonsteroidal anti-inflammatory drugs and perioperative bleeding in paediatric tonsillectomy.
Lewis SR, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jul 18;7:CD003591
扁桃摘出術 術後の疼痛管理にNSAIDを使うことはあるが出血リスクにならないかどうかのメタアナリシス。15個のRCTの1101人が対象。
手術による止血が必要な出血は、NSAIDs使用でオッズ比 1.69 (95%CI 0.71 to 4.01).
全出血は、NSAIDs使用でオッズ比 0.99 (95%CI 0.41 to 2.40)


Burton MJ, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Jan 21;(1):CD001802
反復性扁桃炎に対するメタアナリシス、コクランから。
小児に関して5つのRCT(小児719人)、成人に関して1つのRCT(70人)が対象。


Steward et al. Cochran Database Stst Rev.
周術期のステロイド使用に関するメタアナリシス。
ステロイド使用により術後の嘔吐・嘔気を半分ぐらい減らす。
痛みもVASスケールを1点ぐらい減らす。(4.72 ➡ 3.65)


Perioperative local anaesthesia for reducing pain following tonsillectomy.Hollis LJ et al. Cochrane Database Syst Rev. 2000;(2):CD001874.
周術期の局所麻酔によって術後疼痛が減るかどうかのメタ。
要約だけからはよく分からないけど、reliableなデータがないし、あまり減らさないみたい。

Oral rinsesmouthwashes and sprays for improving recovery following tonsillectomy.Fedorowicz Z, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2011 Jul 6;(7):CD007806

扁桃摘出後の口腔内スプレーについてのメタなんかも。研究のバイアスが強いみたいだけど、あまり疼痛コントロールには関係しないのか?


慢性扁桃炎に対する扁桃摘出術の適応は年3回以上の扁桃炎、が通説だと思うのですが、咽頭炎に対してはどうだろう・・・という論文。


Short-term outcomes of tonsillectomy in adult patients with recurrent pharyngitis: a randomized controlled trial.Koskenkorva T, et al. CMAJ. 2013;185(8):E331-6.

Background:
咽頭炎に対する扁桃摘出術の効果は、成人においてエビデンスは不十分であり、年3回以上繰り返す咽頭炎に対する扁桃摘出術の効果を検討した。
Methods:
年3回以上、病院に咽頭炎で受診した患者を対象。
ランダム化比較試験で、扁桃摘出術をした場合と、しなかった場合で咽頭炎の頻度を、5ヶ月間の観察期間で比較。
Outcome:
CRP 4.0mg/dl以上の咽頭炎の頻度は、両群で差がなかった。
全咽頭炎の頻度は扁桃摘出をした群で4%、しなかった群で43%。


一般的に咽頭炎に関しては扁桃摘出術をしないと思ってたので、扁桃摘出術をして全咽頭炎が減ったのは意外。
ただ、観察期間は5ヶ月だけなのでseasonal biasはかかる。できれば1年間の観察期間をみたいとこだけど、control群も5ヶ月後に扁桃摘出術をしてるので、長期成績はわからない。
今回の対象が扁桃にも関わるような咽頭炎患者を対象にしているので、いわゆる咽頭炎患者を対象としていないので、その辺も悩ましい。
もう少し追試が欲しいとこです。




2013年8月9日金曜日

短期ステロイドによる心筋梗塞

突発性難聴や顔面神経麻痺などでステロイドを短期的に使用するケースは耳鼻科では多い。(ステロイドの使用が妥当かどうかは別においといて)

CABG後の後期高齢者に対して短期ステロイド使用について相談があったので調べた論文。CABG後、PCI後など陳旧性心筋梗塞の方は患者層に一定数いるので、こういうテーマは比較的切実。
今回は
P:  CABG後の患者
I :  短期的にステロイドを使用した場合
C:  使わなかった場合に比べて
O: 新規心筋梗塞が発症しやすい・・・かどうかに焦点を絞って文献検索。

ステロイドの長期使用は、脂質代謝異常や糖尿病を誘導し、急性心筋梗塞を発症する可能性が1〜2倍程度には増幅するよう。ただ、陳旧性心筋梗塞における短期的なステロイドに関して、急性心筋梗塞の可能性について調べた論文はみつからず。

かろうじて、CABGの周術期にステロイド使用した場合の心筋梗塞の割合について、RCTのメタアナリシスは発見。




背景:
CABG周術期のステロイド使用は、CABG後のreperfusion reactionによる心筋障害を抑制し、予後の改善の可能性がある。


対象文献:
Cochrane, Medline, Embase, CINAHL, OVID
CABG周術期におけるステロイドの効果を検討したRCT



Clinical benefit of steroid use in patients undergoing cardiopulmonary bypass: a meta-analysis of randomized trials.


Pichard P Whitolock et al. Eur Heart J. 2008;29:2592-600 PMID 18664462




論文本来の目的と自分の興味は別なので、論文の内容は無視しますが、
ステロイド使用、非使用の場合の、Outcomeの比較は以下の通り。



心筋梗塞の可能性はRelative risk  0.99倍

Best availableなデータとしては、この辺かな・・・。
少なくともステロイド短期使用で心筋梗塞はなさそう・・・なのかな。
(もちろん、ステロイドの容量などなど加味すべき項目はありますけど)