2013年11月29日金曜日

涙嚢鼻腔吻合DCR 術後のステント留置は必要?

鼻涙管狭窄症に対する涙嚢鼻腔吻合術。
術後に吻合部にステントを入れるかどうかについてのレビュー。

先週ぐらいに筑波の先生がこられた時にも話題になりましたが、
涙嚢鼻腔吻合術(DCR)後の閉塞をどうやって防ぐのか。
縫合の仕方を工夫したら術後再閉塞はないとか、ステントはいれた方がいいとか、ステントには●●がいいとかいろいろ意見はありますが、じゃあ現状でのBest availavle evidenceはどうなのか。

Is postoperative stenting necessary in endoscopic dacryocystorhinostomy?
Liang J, Lane A. 
Laryngoscope. 2013 Nov;123(11):2589-90. PMID: 23620087

ランダム化比較試験も3つほどあるらしく、以下のようなまとめです。
結局ステントをいれたほうがよいかどうかは不明。あまり差はないので、自分の信じる方向でよいんでしょうか。


ステントの留置期間は8週が2つ。
フォローアップは半年はしたほうが信頼性のあるデータなのかな。
自分の術後成績を評価するなら、半年は期間が必要そう。
いつごろ再閉塞するのかは、患者説明にデータ欲しいので論文読み込み要。


2013年11月28日木曜日

VTTQによる頸部リンパ節転移の評価

ARFIやVTTQを用いた頸部リンパ節転移の評価。
前に論文を書いたのを記事に書きましたが、やはりちょっと気になるので時々、この領域については研究発表の状況は気になるところ。

まあ・・・頸部リンパ節に関して熱い情熱を燃やす人は、かなり少ないのでしょうが。
頸部リンパ節だと、このあたり。他には目立たなそう。

Meng W, Xing P, Chen Q, Wu C.
Eur J Radiol. 2013 Oct;82(10):1788-92. PMID: 23820176
医中誌でもあまり報告はないのですが重粒子医科学センターで研究が進んでいそう。

甲状腺関連だとそれなりに報告はでつつあるようで。

3.
Zhang YF, Xu HX, He Y, Liu C, Guo LH, Liu LN, Xu JM.
PLoS One. 2012;7(11):e49094. doi: 10.1371/journal.pone.0049094. Epub 2012 Nov 13.
PMID:
 
23152855
 
[PubMed - indexed for MEDLINE]
7.
Zhang FJ, Han RL.
Eur J Radiol. 2013 Nov;82(11):e686-90. doi: 10.1016/j.ejrad.2013.06.027. Epub 2013 Jul 29.
PMID:
 
23906442
 
[PubMed - in process]
Related citationsだと

肝臓領域での進歩がやはり先攻して、それ以降に他の領域での適応も広がっていくのか。Elastgraphyとの相違や有用性の問題などが気になります。
Elastgraphyは周囲の組織とひずみの仕方の差で硬さを推定すると思うのですが(あまり使用しないのでちょっと不安)、頸部の場合、頸部でこぼこしててElastgraphyで硬さを相対評価するための、相対するものが必ずしもない。
過去の報告では胸鎖乳突筋との比で硬さを想定してましたが、胸鎖乳突筋が必ず評価したい頸部リンパ節と同一画面にうつる保障はないため、頸部においてはARFI/VTTQの方が有用?

・・・まっ、FNAを気軽にやるのも選択肢だと思います。FNA related metastasisの頻度の報告がしりたい、case reportないかなーと思うんですけど、見つからねーなー。

2013年11月19日火曜日

JIKEI heart study

学生との抄読会。今回でRCTは終了の予定。次回からはMeta-analysisにうつるので、これまでの復習と確認。
今回の論文はJIKEI heart study。ディオバン関連の不祥事?のために論文自体はとりけされました。論文もダウンロードするとRETRACTEDと赤文字でかかれてますが、一応読めます。

学生からの要望もあったので、選択。やっぱり、何故JIKEI heart studyがまずかったのか、自分で判断できる目が必要だろうし。この論文の問題はいろいろなHPでみることができるのですが、一つはPrimary endpointの変更。で、試験デザインがPROBE法なため。

治療効果を判定する研究の場合、何でもって治療効果を評価するかは事前に決定しておく必要があります。あとで変更するのはありえない。医学研究以外を例にすると・・・

野球の試合が終わったあとに、自分のチームは得点は少ないが、相手チームより本塁打が多いから自分たちの勝ちだ、ということです。

事前に設定したルール :得点多い方が勝ち
後出しで設定したルール:本塁打が多い方が勝ち

まあ、野球ではありえないですが、こういうことです。

PROBEについては医学会新聞のまとめが好きなのでこちら

JIKEI Heart Study
Valsartan in a Japanese population with hypertension and other cardiovascular disease (Jikei Heart Study): a randomised, open-label, blinded endpoint morbidity-mortality study.
Mochizuki S, et al (Jikei Heart Study group). 

Lancet. 2007 Apr 28;369(9571):1431-9. PMID:17467513




…Primary endpointの変更については、design論文よまないと分からないのですけど。

2013年11月16日土曜日

名刺作成

病院見学などのため名刺作成。
無機質な名刺は余ってるので、ちょっと今回はデザインをいじる。











いくつかの画像を読み込んで、加工してみました。
顔面神経をイメージしてみました。
HPにも使用。とりあえず満足、ちょっと時間かかったけど・・・。

2013年11月9日土曜日

人工内耳

自分の専門を聞かれることがある。医学生のころはどの科も面白かったけど、やっぱ手を動かしたいなーということで(座学嫌いだし)外科系。
医学生のころは医療崩壊とか言われてなくて、救急車のたらい回しとかも話題になく、つまり医療=安全というイメージ。その中で、救命は当たり前にできるんだったら、QOLを改善する機能外科の方がヒトに求められそうと思い、

触覚 → 皮膚科?
視覚 → 眼科?
聴覚 → 耳鼻科?
嗅覚 → 耳鼻科?
味覚 → 耳鼻科?

で、耳鼻科も悪くないなーと思った。
実際には感覚器も種々の科がオーバーラップしてる部分はあるし、感覚器の治療って神経再生に関わってなかなかできないんですけどね。

一番QOLの改善に役立つなと思うのは、音声や聴覚に改善をもたらした時。
特に人工内耳埋込術で、全然耳が聞こえないヒトが、手術によって音が聞こえる瞬間ってのは、耳が聞こえなくなったヒトにとっては感動の瞬間。

Youtubeにあった「29 years old and hearing myself for the 1st time!」。生まれつき聴覚に障害のある29歳の女性が、生まれて初めて自分の声や人の声などを「聞いた」時の映像。
聴力を失ってしまった人、または今まで音を聞いたなかった人が、音が聞こえるようになった瞬間ってのは感動的だし、よかったなと思います。この29歳の女性の笑顔も素敵です。



born deaf の割に、speaking が smooth なのは
中等度難聴でhearing aidで対応してたのかな。
進行性難聴で29歳で人工内耳なのかなー。

・・・人工内耳を何歳までするかってのに、最近は悩まされます。

2013年11月5日火曜日

抗菌薬 or 銀コーティングで、膀胱留置カテーテル?による尿路感染は減るか?

学生との抄読会。今回はランダム化比較試験のうち、統計学有意差と臨床的有意義の違いについての解説と、膀胱留置カテーテルに関する論文。

統計学的に差があるかないか(講義では “p値が0.05未満” でよく説明される)ですが、統計学的に差があるからといってすぐに臨床に直結するわけではない。

「薬Aを投与すると、投与しない場合に治療効果が●●%よくなる」
というのが証明されたからといって、すぐに薬Aを投与するのが一般的になるのではなく、薬Aの投与によるメリットがデメリットよりも十分大きいかといったことが問題になってくる。デメリットはその薬の管理や副作用や、そのほか例えば薬価だったりいろいろです。

今回選んだ論文

膀胱留置カテーテルによる尿路感染は、カテーテルを抗菌薬などでコーティングしたら減らせるか?
Antimicrobial catheters for reduction of symptomatic urinary tract infection in adults requiring short-term catheterisation in hospital: a multicentre randomised controlled trial 
Lancet 2012; 380: 1927–35. PMID: 23134837    


Abstractに記載があるけど
事前に3.3%の尿路感染減少が有用と定義。
「We postulated that a 3.3 % absolute reduction in CAUTI would represent sufficient benefit to recommend routine use of antimicrobial catheters」
実際には2.1%しか減少しなかったのでRoutine useについてはnot recomendという形。

ほかにもっと面白い例があったと思うけど、みつからなかったのでこれにしました。
大事なのは、臨床上意味がある差(医療者・患者が期待する差)を、医療介入で出せるかどうか。統計学的な差はあくまでも統計学上の差でしかないので。


*臨床実習の学生より実習施設は銀コーティングと教えてもらった。
 この論文だけだと銀コーティングがよいのか分からないので、Meta-alanysisや、この論文へのLetterも読まないとな・・・。