2013年12月10日火曜日

心原性ショックに対するIABP

学生との抄読会。本日のテーマは急性心筋梗塞による心原性ショックに対する、IABP(大動脈バルーンパンピング)の効果。国家試験や卒業試験の時には、その機序を覚えた記憶があるし、イヤーノートに書いていたと思います。で、その効果はいかほど?という話。

学生に渡したシナリオはこんな感じ。
使用した論文は
Intraaortic balloon support for myocardial infarction with cardiogenic shock.
IABK-SHOCK Investigators. N Engl J Med. 2012;367:1287-96. PMID 22920912


IABP使用群と使用しなかった群の死亡率はこんな感じ。30日まで追跡。差はわずか(統計学的な差はなし)。自分の専門領域と全然違うので、コメントは控えますが。NEJM上でも、Letterなともやり取りされてるみたいで、関心の高さが伺えます。

個人的には、IABPについては国家試験で学んだ以上のことは学んでおらず、初期研修も循環器に対する苦手意識(食わず嫌い・・・)のため循環器内科ローテしてないので・・・。国家試験で病態生理に基づいた記憶が、臨床上も正しいかどうかは悩ましいなと感じますね。

2013年12月8日日曜日

急性喉頭蓋炎のまとめ

急性喉頭蓋炎は、風邪のようにみえて時に窒息して死亡する可能性のある疾患の一つ。空気の通り道である声門の直上にある喉頭蓋およびその周囲が感染などをきっかけに腫脹して時に窒息してしまう。

Killer sore throat 致死的咽頭痛 の代表疾患。
くわしくは、日々是よろずER診療

一般的には咽頭痛や嚥下時痛を訴えて来院した患者の場合に、頭の片隅においておく疾患。頻度としては10万人あたり1−3人(成人の場合)なので、遭遇する可能性は、総合病院の耳鼻科を除くとそんなには遭遇しない。
ただ、風邪のようにみえる、つまり一見軽症にみえるために、見逃して&しかも窒息まで至ったケースというのはミゼラブル。まあ、医療者からみたら地雷みたいなもの。


 TEDでBrian Goldman「医師も失敗する。そのことを語ってもよいだろうか」でも例として出てます。見逃された場合は、訴訟になることも時に。

この疾患を疑った場合には、頸部軟線 Soft-tissue lateral neck radiographsを撮像し、喉頭蓋の腫脹を評価する。インターネットでいくつか転がってますが、こんな感じ。




最近フォローしてなかったけど、いくつか論文がでてます。
一番気になるのは
 Tsai KK, Wang CH. Acute epiglottitis following traditional Chinese gua sha therapy.
 CMAJ. 2013 Nov 25. [Epub ahead of print] PMID: 24277709

CMAJにAcceptされてるけど、全文読みたいとこだが。(Letterみたいですが)、Gua she therapy、、、
アジアの伝統的治療のようで、擦過して点状出血を生じさせるもの?
こんな治療もあるんだな。どの程度の効果があるのか、Standard therapyになるかはこれから検討といったとこでしょうか。






2013年11月29日金曜日

涙嚢鼻腔吻合DCR 術後のステント留置は必要?

鼻涙管狭窄症に対する涙嚢鼻腔吻合術。
術後に吻合部にステントを入れるかどうかについてのレビュー。

先週ぐらいに筑波の先生がこられた時にも話題になりましたが、
涙嚢鼻腔吻合術(DCR)後の閉塞をどうやって防ぐのか。
縫合の仕方を工夫したら術後再閉塞はないとか、ステントはいれた方がいいとか、ステントには●●がいいとかいろいろ意見はありますが、じゃあ現状でのBest availavle evidenceはどうなのか。

Is postoperative stenting necessary in endoscopic dacryocystorhinostomy?
Liang J, Lane A. 
Laryngoscope. 2013 Nov;123(11):2589-90. PMID: 23620087

ランダム化比較試験も3つほどあるらしく、以下のようなまとめです。
結局ステントをいれたほうがよいかどうかは不明。あまり差はないので、自分の信じる方向でよいんでしょうか。


ステントの留置期間は8週が2つ。
フォローアップは半年はしたほうが信頼性のあるデータなのかな。
自分の術後成績を評価するなら、半年は期間が必要そう。
いつごろ再閉塞するのかは、患者説明にデータ欲しいので論文読み込み要。


2013年11月28日木曜日

VTTQによる頸部リンパ節転移の評価

ARFIやVTTQを用いた頸部リンパ節転移の評価。
前に論文を書いたのを記事に書きましたが、やはりちょっと気になるので時々、この領域については研究発表の状況は気になるところ。

まあ・・・頸部リンパ節に関して熱い情熱を燃やす人は、かなり少ないのでしょうが。
頸部リンパ節だと、このあたり。他には目立たなそう。

Meng W, Xing P, Chen Q, Wu C.
Eur J Radiol. 2013 Oct;82(10):1788-92. PMID: 23820176
医中誌でもあまり報告はないのですが重粒子医科学センターで研究が進んでいそう。

甲状腺関連だとそれなりに報告はでつつあるようで。

3.
Zhang YF, Xu HX, He Y, Liu C, Guo LH, Liu LN, Xu JM.
PLoS One. 2012;7(11):e49094. doi: 10.1371/journal.pone.0049094. Epub 2012 Nov 13.
PMID:
 
23152855
 
[PubMed - indexed for MEDLINE]
7.
Zhang FJ, Han RL.
Eur J Radiol. 2013 Nov;82(11):e686-90. doi: 10.1016/j.ejrad.2013.06.027. Epub 2013 Jul 29.
PMID:
 
23906442
 
[PubMed - in process]
Related citationsだと

肝臓領域での進歩がやはり先攻して、それ以降に他の領域での適応も広がっていくのか。Elastgraphyとの相違や有用性の問題などが気になります。
Elastgraphyは周囲の組織とひずみの仕方の差で硬さを推定すると思うのですが(あまり使用しないのでちょっと不安)、頸部の場合、頸部でこぼこしててElastgraphyで硬さを相対評価するための、相対するものが必ずしもない。
過去の報告では胸鎖乳突筋との比で硬さを想定してましたが、胸鎖乳突筋が必ず評価したい頸部リンパ節と同一画面にうつる保障はないため、頸部においてはARFI/VTTQの方が有用?

・・・まっ、FNAを気軽にやるのも選択肢だと思います。FNA related metastasisの頻度の報告がしりたい、case reportないかなーと思うんですけど、見つからねーなー。

2013年11月19日火曜日

JIKEI heart study

学生との抄読会。今回でRCTは終了の予定。次回からはMeta-analysisにうつるので、これまでの復習と確認。
今回の論文はJIKEI heart study。ディオバン関連の不祥事?のために論文自体はとりけされました。論文もダウンロードするとRETRACTEDと赤文字でかかれてますが、一応読めます。

学生からの要望もあったので、選択。やっぱり、何故JIKEI heart studyがまずかったのか、自分で判断できる目が必要だろうし。この論文の問題はいろいろなHPでみることができるのですが、一つはPrimary endpointの変更。で、試験デザインがPROBE法なため。

治療効果を判定する研究の場合、何でもって治療効果を評価するかは事前に決定しておく必要があります。あとで変更するのはありえない。医学研究以外を例にすると・・・

野球の試合が終わったあとに、自分のチームは得点は少ないが、相手チームより本塁打が多いから自分たちの勝ちだ、ということです。

事前に設定したルール :得点多い方が勝ち
後出しで設定したルール:本塁打が多い方が勝ち

まあ、野球ではありえないですが、こういうことです。

PROBEについては医学会新聞のまとめが好きなのでこちら

JIKEI Heart Study
Valsartan in a Japanese population with hypertension and other cardiovascular disease (Jikei Heart Study): a randomised, open-label, blinded endpoint morbidity-mortality study.
Mochizuki S, et al (Jikei Heart Study group). 

Lancet. 2007 Apr 28;369(9571):1431-9. PMID:17467513




…Primary endpointの変更については、design論文よまないと分からないのですけど。

2013年11月16日土曜日

名刺作成

病院見学などのため名刺作成。
無機質な名刺は余ってるので、ちょっと今回はデザインをいじる。











いくつかの画像を読み込んで、加工してみました。
顔面神経をイメージしてみました。
HPにも使用。とりあえず満足、ちょっと時間かかったけど・・・。

2013年11月9日土曜日

人工内耳

自分の専門を聞かれることがある。医学生のころはどの科も面白かったけど、やっぱ手を動かしたいなーということで(座学嫌いだし)外科系。
医学生のころは医療崩壊とか言われてなくて、救急車のたらい回しとかも話題になく、つまり医療=安全というイメージ。その中で、救命は当たり前にできるんだったら、QOLを改善する機能外科の方がヒトに求められそうと思い、

触覚 → 皮膚科?
視覚 → 眼科?
聴覚 → 耳鼻科?
嗅覚 → 耳鼻科?
味覚 → 耳鼻科?

で、耳鼻科も悪くないなーと思った。
実際には感覚器も種々の科がオーバーラップしてる部分はあるし、感覚器の治療って神経再生に関わってなかなかできないんですけどね。

一番QOLの改善に役立つなと思うのは、音声や聴覚に改善をもたらした時。
特に人工内耳埋込術で、全然耳が聞こえないヒトが、手術によって音が聞こえる瞬間ってのは、耳が聞こえなくなったヒトにとっては感動の瞬間。

Youtubeにあった「29 years old and hearing myself for the 1st time!」。生まれつき聴覚に障害のある29歳の女性が、生まれて初めて自分の声や人の声などを「聞いた」時の映像。
聴力を失ってしまった人、または今まで音を聞いたなかった人が、音が聞こえるようになった瞬間ってのは感動的だし、よかったなと思います。この29歳の女性の笑顔も素敵です。



born deaf の割に、speaking が smooth なのは
中等度難聴でhearing aidで対応してたのかな。
進行性難聴で29歳で人工内耳なのかなー。

・・・人工内耳を何歳までするかってのに、最近は悩まされます。

2013年11月5日火曜日

抗菌薬 or 銀コーティングで、膀胱留置カテーテル?による尿路感染は減るか?

学生との抄読会。今回はランダム化比較試験のうち、統計学有意差と臨床的有意義の違いについての解説と、膀胱留置カテーテルに関する論文。

統計学的に差があるかないか(講義では “p値が0.05未満” でよく説明される)ですが、統計学的に差があるからといってすぐに臨床に直結するわけではない。

「薬Aを投与すると、投与しない場合に治療効果が●●%よくなる」
というのが証明されたからといって、すぐに薬Aを投与するのが一般的になるのではなく、薬Aの投与によるメリットがデメリットよりも十分大きいかといったことが問題になってくる。デメリットはその薬の管理や副作用や、そのほか例えば薬価だったりいろいろです。

今回選んだ論文

膀胱留置カテーテルによる尿路感染は、カテーテルを抗菌薬などでコーティングしたら減らせるか?
Antimicrobial catheters for reduction of symptomatic urinary tract infection in adults requiring short-term catheterisation in hospital: a multicentre randomised controlled trial 
Lancet 2012; 380: 1927–35. PMID: 23134837    


Abstractに記載があるけど
事前に3.3%の尿路感染減少が有用と定義。
「We postulated that a 3.3 % absolute reduction in CAUTI would represent sufficient benefit to recommend routine use of antimicrobial catheters」
実際には2.1%しか減少しなかったのでRoutine useについてはnot recomendという形。

ほかにもっと面白い例があったと思うけど、みつからなかったのでこれにしました。
大事なのは、臨床上意味がある差(医療者・患者が期待する差)を、医療介入で出せるかどうか。統計学的な差はあくまでも統計学上の差でしかないので。


*臨床実習の学生より実習施設は銀コーティングと教えてもらった。
 この論文だけだと銀コーティングがよいのか分からないので、Meta-alanysisや、この論文へのLetterも読まないとな・・・。


2013年10月3日木曜日

抄読会 True/Surrogate Endpoint

今年も再開した学生との論文の抄読会。
昨年はあまり考えず、読みたいと思った論文を読んでいましたが、今年はちょっと系統的にランダム化比較試験、メタアナリシスを読む予定。

ということで、今日はCAST studyから。
ランダム化比較試験におけるTrue endpoint と Surrogate endpointの違いについて学ぶために選んでみました。

●True endpoint
 本当に大事にしたい効果
●Surrogate endpoint
 本当に大事にしたいやつが測定できないので代理に測定するもの。

よくあるのは・・・
糖尿病のTrue endpointは死亡率の低下や腎不全導入の減少。Surrogeteは血糖低下、HbA1cの低下。高血圧ならTrueは脳卒中の減少、Surrogateは血圧低下。

時々患者さんの中で、血圧が下がった、HbA1cが下がったと一喜一憂するケースがありますが(これはこれでいいんですけど)、本当の意味では死亡率の低下などを患者さんは望んでいるわけで。
一喜一憂してて、
ちゃんと血糖を下げる薬のんでたのに透析になった・・・血圧を下げる薬を飲んでたけど、脳卒中になった・・・っていうケースがありうるので。True / Surrogateの認識は大事です。

CAST studyについては去年も読んだので、そちらを参照

2013年9月2日月曜日

CTと発癌の話

CTの撮像と発癌に関して。
小児のCTに関して結構な年数のフォローアップ。


Cancer risk in 680 000 people exposed to computed tomography scans in childhood or adolescence: data linkage study of 11 million AustraliansBMJ 2013;346:f2360



CTの回数とIncidence rate ratio。CT撮像で1.2倍ってこと?

高齢の方の場合だと、CTに伴う発癌のリスクは、もともとの余命の関係でデメリットは少ないか?あくまでもCTと発癌の可能性なので、それにともなう死亡率の悪化とかまでは分かんないけど

2013年8月10日土曜日

扁桃摘出術(扁摘)のメタアナリシス いろいろ

扁桃摘出術は普遍的な手術なので、いろいろ研究あるんですが、不勉強だったのでまとめ。いくつか。要約からのみ。


Nonsteroidal anti-inflammatory drugs and perioperative bleeding in paediatric tonsillectomy.
Lewis SR, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jul 18;7:CD003591
扁桃摘出術 術後の疼痛管理にNSAIDを使うことはあるが出血リスクにならないかどうかのメタアナリシス。15個のRCTの1101人が対象。
手術による止血が必要な出血は、NSAIDs使用でオッズ比 1.69 (95%CI 0.71 to 4.01).
全出血は、NSAIDs使用でオッズ比 0.99 (95%CI 0.41 to 2.40)


Burton MJ, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Jan 21;(1):CD001802
反復性扁桃炎に対するメタアナリシス、コクランから。
小児に関して5つのRCT(小児719人)、成人に関して1つのRCT(70人)が対象。


Steward et al. Cochran Database Stst Rev.
周術期のステロイド使用に関するメタアナリシス。
ステロイド使用により術後の嘔吐・嘔気を半分ぐらい減らす。
痛みもVASスケールを1点ぐらい減らす。(4.72 ➡ 3.65)


Perioperative local anaesthesia for reducing pain following tonsillectomy.Hollis LJ et al. Cochrane Database Syst Rev. 2000;(2):CD001874.
周術期の局所麻酔によって術後疼痛が減るかどうかのメタ。
要約だけからはよく分からないけど、reliableなデータがないし、あまり減らさないみたい。

Oral rinsesmouthwashes and sprays for improving recovery following tonsillectomy.Fedorowicz Z, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2011 Jul 6;(7):CD007806

扁桃摘出後の口腔内スプレーについてのメタなんかも。研究のバイアスが強いみたいだけど、あまり疼痛コントロールには関係しないのか?


慢性扁桃炎に対する扁桃摘出術の適応は年3回以上の扁桃炎、が通説だと思うのですが、咽頭炎に対してはどうだろう・・・という論文。


Short-term outcomes of tonsillectomy in adult patients with recurrent pharyngitis: a randomized controlled trial.Koskenkorva T, et al. CMAJ. 2013;185(8):E331-6.

Background:
咽頭炎に対する扁桃摘出術の効果は、成人においてエビデンスは不十分であり、年3回以上繰り返す咽頭炎に対する扁桃摘出術の効果を検討した。
Methods:
年3回以上、病院に咽頭炎で受診した患者を対象。
ランダム化比較試験で、扁桃摘出術をした場合と、しなかった場合で咽頭炎の頻度を、5ヶ月間の観察期間で比較。
Outcome:
CRP 4.0mg/dl以上の咽頭炎の頻度は、両群で差がなかった。
全咽頭炎の頻度は扁桃摘出をした群で4%、しなかった群で43%。


一般的に咽頭炎に関しては扁桃摘出術をしないと思ってたので、扁桃摘出術をして全咽頭炎が減ったのは意外。
ただ、観察期間は5ヶ月だけなのでseasonal biasはかかる。できれば1年間の観察期間をみたいとこだけど、control群も5ヶ月後に扁桃摘出術をしてるので、長期成績はわからない。
今回の対象が扁桃にも関わるような咽頭炎患者を対象にしているので、いわゆる咽頭炎患者を対象としていないので、その辺も悩ましい。
もう少し追試が欲しいとこです。




2013年8月9日金曜日

短期ステロイドによる心筋梗塞

突発性難聴や顔面神経麻痺などでステロイドを短期的に使用するケースは耳鼻科では多い。(ステロイドの使用が妥当かどうかは別においといて)

CABG後の後期高齢者に対して短期ステロイド使用について相談があったので調べた論文。CABG後、PCI後など陳旧性心筋梗塞の方は患者層に一定数いるので、こういうテーマは比較的切実。
今回は
P:  CABG後の患者
I :  短期的にステロイドを使用した場合
C:  使わなかった場合に比べて
O: 新規心筋梗塞が発症しやすい・・・かどうかに焦点を絞って文献検索。

ステロイドの長期使用は、脂質代謝異常や糖尿病を誘導し、急性心筋梗塞を発症する可能性が1〜2倍程度には増幅するよう。ただ、陳旧性心筋梗塞における短期的なステロイドに関して、急性心筋梗塞の可能性について調べた論文はみつからず。

かろうじて、CABGの周術期にステロイド使用した場合の心筋梗塞の割合について、RCTのメタアナリシスは発見。




背景:
CABG周術期のステロイド使用は、CABG後のreperfusion reactionによる心筋障害を抑制し、予後の改善の可能性がある。


対象文献:
Cochrane, Medline, Embase, CINAHL, OVID
CABG周術期におけるステロイドの効果を検討したRCT



Clinical benefit of steroid use in patients undergoing cardiopulmonary bypass: a meta-analysis of randomized trials.


Pichard P Whitolock et al. Eur Heart J. 2008;29:2592-600 PMID 18664462




論文本来の目的と自分の興味は別なので、論文の内容は無視しますが、
ステロイド使用、非使用の場合の、Outcomeの比較は以下の通り。



心筋梗塞の可能性はRelative risk  0.99倍

Best availableなデータとしては、この辺かな・・・。
少なくともステロイド短期使用で心筋梗塞はなさそう・・・なのかな。
(もちろん、ステロイドの容量などなど加味すべき項目はありますけど)

2013年7月31日水曜日

抹消性顔面神経麻痺、疫学

● 顔面神経麻痺の原因

脳血管障害などで、症状のひとつとして中枢性顔面神経麻痺が生じる場合、疾患全体像としてとらえられる。そのため、大学病院などの顔面神経専門外来などでは、中枢性疾患よりは顔面神経のみ損傷された抹消性顔面神経麻痺が対象となることが多い。

抹消性顔面神経 全体のうち、ヘルペスウイルスが関与しているとされるBell麻痺およびHunt症候群がそれぞれ、60〜70%、10〜15%程度と大半を占める。ただ、抹消顔面神経麻痺の疫学データは、大学病院などの顔面神経専門外来がベースとなっていることが多く、外傷性や腫瘍性など比較的マレな疾患が相対的に多く含まれている可能性がある。そのため、実際の発症割合としては、Bell麻痺やHunt症候群がもっと多く占める可能性がある。


2013年、ソウルで行われた国際耳鼻咽喉科学会 IFOS(International Federation of Oto-Rhino-Laryngological Society)でのYanagihara N.の疫学報告(大学病院の専門外来での割合)だと




・・・過去20年ぐらいで外傷性顔面神経麻痺の割合は減ってきてBell麻痺やHunt症候群が増えんだよなー。

1970年ぐらいの論文を読んでると、Bell麻痺の原因もよく分からないし、治療もよく分からないから側頭骨の手術してみたりしている。そういう時代だと、開業医でみれる顔面神経麻痺の疾患は少なく、今以上に大学病院でBell麻痺やHunt症候群をみていたはず。

それがここ20年なら、Bell麻痺やHunt症候群なら開業医でみれることが分かっているわけで。で、どっちかというとBell麻痺やHunt症候群の割合は減ると思うだけど、それでも外傷性の割合が減っているってことは、かなり外傷性顔面神経麻痺は減ってるんだろうな。


2014/01/06 Memo






2013年7月13日土曜日

統計学的 結果の記載

統計学的結果をどう記載するか。

治療効果や、診断精度の研究において。
p 値がすごい大事だなーと思ってましたが、p 値を算出するのではなく、今は点推定値と信頼区間を示すことが大事なんだなと。

p 値にこだわってれば、Discussionはstatistical significantって書いて、Yes or No !みたいな書き方してたけど。点推定値と信頼区間で話をすると、その結果をどう臨床に適応するかといった話がすごい曖昧になるので、難しい。
外的妥当性をどう考えるか、日本語でもしゃべりにくいのに、英語で書くのは難しい。日本の現状と、海外の現状が一致してるかどうか知識がないのも問題。


まあ、それはさておき、p 値 が0.05未満じゃなった時。どんな英語が使われてるかまとめてみたサイト。よく集めたな。。。


http://bigthink.com/neurobonkers/a-borderline-definite-marginally-mild-notably-numerically-increasing-suggestively-verging-on-significant-result

頭部扁平上皮癌、放射線治療後の遠隔転移リスク


頭頸部扁平状悲願の局所コントロールと、遠隔転移について。
放射線(科学)療法後(Radiotexerapy: RT)の患者に限ってなので、手術するか放射線治療するか施設により判断が異なるので、自施設でも結果を適応できるか分かりませんが。


Dragovic AF,  et al. 
Locoregional failure and the risk of distant metastasis after modern radiotherapy for head and neck cancer.
Head Neck. 2013 ;35:381-7. PMID 

22407986



背景:
 RTで治療した患者の遠隔転移のリスクは局所再発。ここ20年で治療の進歩(化学療法など)があり、遠隔転移のリスクがどうなったか評価する。
方法:
 Retrospective analysis(1995〜2007年に治療)
 根治的RT(±化学療法)の560人,上咽頭・副鼻腔癌は除外、術語も除外
 化学療法の大半はプラチナ製剤
結果:
 StageⅢ、Ⅳが83%
 (T1/2/3/4 = 10/29/30/31%, N0/1/2/3 = 33/14/44/9%)

 多変量解析の結果
 リンパ節転移のステージ、局所制御が遠隔転移のリスクファクターだった。


 縦軸は50%が下限でかかれてて、Note the break in the scale at 0.5 on the Y-axis.こういういう書き方するんですね。親切な気がしました。

 治療後、外来でいつ画像検査するかとか考えますが、参考になります。2年ぐらいすると遠隔転移も落ち着くんですかね。

2013年7月12日金曜日

外科医が手術室で身につけるものと創部感染の関係について。総説、過去のまとめ。20ページ、読み進めたいが、心が折れる。


Eisen DBSurgeon's garb and infection control: what's the evidence?J Am Acad Dermatol. 2011 ;64:960.e1-20


● 手袋は大事。
1988年代ですけど、手袋でヘルニア再建の術後感染が29%から0.55%減少とも。
(Geelhoed GW. The pre-Halstedian and post-Halstedian history of the surgical rubber glove. Surg Gynecol Obstet 1988; 167:350-6)

● ガウンも大事。
(でも素材によるみたいと)

● マスクや帽子の影響はよく分かっていないみたい。


当たり前ですけど、手袋やガウンがない時代は、素手で手術するわけで。

耳鼻科は他科と比べると感染防御が甘めかな、多分。まあ、耳、鼻、喉のオペなんて不潔でしかないもんな。外来における患者分泌物による暴露率は結構高いような気がする。

2013年7月6日土曜日

医師らはどのように死ぬか



以前に話題になった記事ですが、メモとして。
別のサイトからの翻訳ですけど、記事の最初・・・

数年前、チャーリー(尊敬される整形外科医であり、よき師でもある)は、胃にしこりをみつけ、外科医にその場所を検査してもらった。そして、検査の結果は膵癌であると診断された。検査した医師は国内でも優秀な外科医の1人で、生存の可能性を5パーセント〜15パーセント、5年間の生存の可能性を3倍に引き上げる画期的な治療法をも考案した人物だったが、それでもチャーリーは無関心だった。

翌日帰宅した彼は仕事を手じまいし、2度と病院へ足を踏み入れる事はなかった。彼は家族と共により心地よく、出来るだけ長い時間を過ごす事に決めたのだ。それから、数ヶ月後に彼は自宅で亡くなった。彼は化学療法、放射線療法、手術療法を行わなかった為、保険制度は彼にあまりお金を費やす事はなかった。



医者の方が現実の医療の限界を知っていて、治療が難しいと判断したら早期にあきらめてしまうのかな。あきらめるというより、死を受け入れて、素敵な(?)最後を迎えたいと考え、実行する。

医者の親族から、「助からないと思ったら、何も治療介入はしないでくれ」
みたいな相談を、冗談まじりでされたことはある。
医者は非医療者に比べて、医療介入の治療効果をoverestimateすることは稀だと思う。
逆に、治ると判断した場合の、介入の副作用はunderestimateしてる気もする。

Hope the best, prepare the worst.

一方で、効果がないと思ってる治療でも患者に提示してる医療者・・・
という記事の中の記載。
まあ、そうだよねと、あまり否定はできない。患者の判断にどこまで踏み込むかは難しい。




2013年7月4日木曜日

急性喉頭蓋炎、Cyst除外のCT

急性喉頭蓋炎の原因、合併に喉頭蓋嚢胞cystが時々関与します。
で、急性喉頭蓋炎で全例にCTをしてcystを探しにいったらどうでしょう?的な論文。



“喉頭蓋炎にcystを合併すると予後が不良なのでCTで見つけることが大事!”
・・・ってのが元々の趣旨ですが、現実的にcystがあろうがなかろうが、喉頭蓋炎のmanagementが変わるか?と言われるとあまり変わる実感はないし。
(施設間格差の影響は大きいでしょうが)。


Although the mortality of epiglottic abscess was previously reported to be as high as 30%, recent studies have reported a significant improvement reporting mortalities of 7%, close to the mortality rate in cases of epiglottitis without an abscess.


って書き方ですが、mortalityがcystあると30%ってあるけど(今は7%ぐらいとありますが)、そこまで予後が悪い疾患じゃないだろうにと個人的には思います。

治療過程で喉頭蓋の腫脹が引いていく段階で、目立ったcystがあれば気づき、その時点でCT➡場合によりcystに対して穿刺吸引/切開排膿で、そこまでmortalityに差はでないんじゃないかな、と感じます。
(この論文を読んで、Koreaとかは初診時にCTがroutineになったりするのかな・・・)


ちなみに、Katori分類でgradeがⅢ度となるほどcyst合併が多いとのこと。まあ、cystがある時点でⅡ度〜Ⅲ度になるから当たり前ですが、確認するのは大事ですね。

2013年6月23日日曜日

頭頸部癌診療ガイドライン、頸部リンパ節転移

頭頸部癌診療ガイドライン2013年版が出たんですね。できればPDFで持ち運びたいので、Kindle版が欲しいですボタンをAmazonでクリック。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医としては最低限持つべきガイドラインか・・・。(耳鼻の機能性疾患に専門特化するなら、そこまで読まなくてもいいんでしょうが)

ちょうど知り合いの先生がガイドラインとして評価してましたが、ガイドライン作成の手順として妥当な方法を取っている、と。(詳しくは分かりません、不勉強です。)Clinical Questionも増えたみたいで、読む価値はありそうです。

個人的には、ちらっとみた
“CQ1-1. 頭頸部癌のN病期診断においてCTは有用か?”が気に入らないんですが(笑)

Clinical questionの建て方として、どの診断ツールが有用か、ならいいのに、何故CTが有用か?なのかは疑問。それに、有用か?とあるけど、“どのくらい” 有用なのかは書いてほしいなー。

自身がN病期診断、リンパ節転移の研究してるからってのはありますが。昔、自分の論文で引用した頸部リンパ節転移のメタアナリシス。知識のUpToDateしてないので少し古い論文ですが。各モダリティのROC curveが記載され、超音波、超音波下の針生検がかなり有用とされます。

Detection of lymph node metastases in head and neck cancer: a meta-analysis comparing US, USgFNAC, CT and MR imaging. 
Eur J Radiol 2007: 64:266-272. PMID 17391885


これ以降のメタだとこの辺でしょうか。上記論文はPET/CTについて文献検索してないのですが、下記のはPET/CTについて検討してます。ただ、超音波について検討してないのはどうなの・・・と思います。


Diagnostic performance of computer tomography, magnetic resonance imaging, and positron emission tomography or positron emission tomography/computer tomography for detection of metastatic lymph nodes in patients with cervical cancer: meta-analysis.
Cancer Sci. 2010;101:1471-1479. PMID 20298252

あと気になるのはこの辺。リンパ節転移があるかないかで治療方針も大きく変わります。大きく内部壊死したリンパ節とかは判断が容易ですが、小さいリンパ節の転移の有無の評価は困難。で、実際どうなの?
と比較したのがこれみたいです。全文読んでないですが、そそられます。モダリティに差はないと結論づけてます。メタ解析の元論文が気になります。研究デザインが難しそうですし。でもやってほしい、解決したい問題です。

Detection of cervical lymph node metastasis in head and neck cancer patients with clinically N0neck-a meta-analysis comparing different imaging modalities.


BMC Cancer. 2012; 12: 236



よく超音波は再現性の問題が課題にあがります。確かに、CTなどのように読み直しができないですし、Inter-operator disagreementとかIntra-operater disagreementをκ-statisticしたら、そんなにCTなど他のモダリティと差はでないんじゃないかなとも。(そういう研究は面倒でやり難いですけど)

2013年6月22日土曜日

患者視点のデータ集積

大学4年生の講義で京都大学の中山健夫先生の講義があったのでお邪魔してきた。EBMとは何か?から始まる講義で、大学でこういう講義あるんですね。
EBMとは
 ・Evidence
 ・周囲の環境
 ・患者の価値観
 ・医療者の経験
をもとに、ベターな判断をする(違ったらごめんなさい)ってことてのを触れてました。講義として大事なことを伝えてるな、と思う一方、臨床実習(ポリクリ)もしてない学生にとっては遠い雲の上のことで、実感は湧かないんじゃないだろうか・・・とも思いました。
まあ、ポリクリ生の相手してる臨床医の僕らが、EBMを伝える必要があるんでしょう。

個人的に一番インパクトがあったのは、 DIPEx-Japan の話


医療を受ける側の人々が、日々の生活の中で病気をどのように体験したかを紹介する、ってのが目的のサイトのようです。実際、病気になった人は、今後どうなるのか、どうしたらいいのか、ってのを悩まれますし、それを供する媒体があるってのは素敵です。

また、患者視点での病気との付き合いを記録したものとして闘病記があります。この闘病記などの患者視点データーベース化って話があると聞いて新鮮でした。(よく考えたら、学生時代に闘病記3冊読んで要約するってサークルで行ったけど、この一環だったのか?)

医療提供者と受給者との情報格差は果てしなく遠いですし、その間を埋めるのは大切だ(そしてこういう活動があるんだな)と再認識な90分でした。

2013年6月21日金曜日

雑記

最近の本棚が臨床試験、疫学とか統計的な分野の本に埋め尽くされる。耳鼻科の雑誌も大半を占めますが。「趣味、統計」みたいな感じ。(Clinical epidemiologyは英語で読めず、結局日本語を買ってしまった・・・)



統計学に精通すると、自分の中で生じた臨床疑問に対して、解決する方法のバリエーションが増える。より多くの疑問が解決できるんだよねー。簡単な統計で解決できるのであれば、それにこしたことはないんだけど。

データを与えられて、ストレートに証明できないけど統計学的手法を用いて疑問を解決する。そのプロセスは面白いし、その疑問が自分にとって(または社会にとって)役立つと、もっと統計に精通したいと思う。それに自分の手持ちの統計バリエーションで解決できる仮説が思いつく。




大学院生として、今は基礎研究に従事。が、現在の興味が臨床研究にあるので、自己の中での齟齬は生じたまま。


 ・血糖が高いから血糖降下療法
 ・ARDSに好中球エラスターゼ
 ・心筋梗塞後 不整脈が多いと死亡が多いから、抗不整脈薬を使う


・・・といった基礎医学の知見が、臨床では役立たないケースをみてしまうと、基礎医学だけで臨床を語ろうとするスタンスに疑念がわく。やっぱり、基礎医学での知見を、ちゃんと臨床でも再評価しようよ、ってかしてみたいんです。
(でも、臨床研究だと科研費はとれないな。やっぱ基礎基礎した研究じゃないとダメなんだろうな)

2013年6月8日土曜日

セツキシマブ、低マグネシウム

頭頸部腫瘍に対するアービタックス(抗EGFR抗体)も、結構身近になった気がします。学会でも、そろそろ一般演題ででてくるのかな。
副作用に低マグネシウム Mgがありますが、遠位尿細管のチャネル阻害によるもの、らしい。一般的には血清マグネシウムよりも尿中マグネシウムの方が身体のマグネシウム不足を反映するけど、アービタックス使用時は参考にならず。
Meta-analysis探してたら、低マグネシウムのメタもあるんですね。


Meta-analysis of incidence and risk of hypomagnesemia with cetuximab for advanced cancer
Chemotherapy. 2010:56:459-65 PMID21088398

Background:
 低Mgは副作用の一つだが、認識されず、メタ分析で頻度などを評価。
Methods:
 Pubmed, EMVASE, Cochrane, American society of clinical oncology, Web of Science
 組入基準はPhaseⅡ/Ⅲ trial, プライマリエンドポイントは低マグネシウムの発生頻度 
Results:
 Grade3-4の低Mgが5.6% (95%CI 3.0〜10.2%)
 All gradeの低Mgは36.7% (95%CI 22.0〜54.4%)



低Mgの定義は悩ましいので、ちょっとそれぞれの原著を読みたいとこですが。血清Mgのうち、Mgイオンだけが活性もってるものの、血清Mgのうち30%ぐらいはアルブミンと結合して不活性とか。血清アルブミン低値で血清Mgは低くでますが、頭頸部癌で化学療法してる方は基本低アルブミンになりがちですよね。血清Mgが身体のMg不足を本当に反映してるかは分からないので、悩ましいところ。
全文が手に入らず読めてないのでなんともですが、臨床症状のある低Mg(呼吸器症状とかlong QTとか)の割合が知りたいな・・・。


アービタックスによる低マグネシウムは蓄積性のある副作用なので、長期投与にともない増えるよう。経口マグネシウム製剤(サプリ?)は効果がないので、基本低マグネシウム出現時は、アービタックス中止+マグネシウム静脈注射。

頭頸部癌領域は、保険適応が通ってまだ浅いので、これから報告がでてくるのかな。

2013年6月7日金曜日

機内での急変

MRICの記事に「お客様の中にお医者様はいらっしゃいますか?」と呼びかけられた時の対応が記載されていた。道路上で倒れた人の対応はあったけど、まだ飛行機の出張は少ないので機内での対応はなし。



あの訴訟大国アメリカで、しかも薬も器具も十分でない機内ではミスが起きやすく、それこそ多額の賠償を覚悟しなくてはならないだろうに、なぜアメリカ人は 人助けに自ら手を挙げて、日本人ドクターはヒーローになるチャンスをみすみす見逃してしまうのか。宗教的な背景やリスクを負うことへの抵抗感の多寡など理 由はいろいろあるだろうけど、想像するに日本人ドクターは専門外には極めて自信がない、ということではないかな。MRICより

学生時代にBLS/ACLSを普及?する学生団体にいたこともあって、もし急変患者に遭遇したらどうするか?ってのは学生同士の話題になった。法律上の問題では、よく引用されるのが「よきソマリア人の法
「災難に遭ったり急病になったりした人など(窮地の人)を救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の法律みたいです。
アメリカやカナダでは法としてある一方で、日本では同様の法がはっきりしていないので、立法化を目指した方がいいんじゃないかって話題があるんですね、wikipedia的に。

患者にとって高度な医療技術も必要だが、それと同じくらい「いざという時」にササッと診てくれる、いわゆる家庭医もやはり必要なんだと思う。因みに、過去 の医療賠償事案で、機内や緊急時の応急治療だけで訴訟になったというケースを、アメリカでも日本でも私は知らない。やはり「助けてもらった」という意識が あれば、どんな国でも訴えることなどしないのだ。(MRICより

MRICの記事では、訴訟のケースがないとありましたが、Wikipedia読むと、判例はないようですが、紛争になった件はあるようです。そういう事例が一つでもあれば、急変時に手をあげようとする人は減るよなー。

ちなみにNEJMに機内発生の急変に関する論文がありますが、600 flightに1回程度あるようです。どういう急変が多いのかとかも書いてるみたいなので、一度読んでみたいな・・・。



機内などで急変が生じた場合に手をあげる医療者が増えればいいと思う。でも、現状だと手をあげない。じゃあどういうプロセスを経れば改善できるのか?は気になるけど、この現状を改善したいと思う、改善できる立場の人って少なそうだな。
東京出張が年2回で往復4flight/year。30年医者やっても0.2回しか遭遇しないのか・・・。


2013年6月4日火曜日

VTTQを用いたリンパ節の診断

頸部のリンパ節が腫脹、という主訴で来院される患者はたくさんいます。
その多くは風邪などの自然治癒する疾患によるリンパ節腫脹ですが、時に癌などによる転移リンパ節が生じることがあります。
一般的に頸部リンパ節の評価はエコーなどのモダリティを使用して行われ、特に頸部リンパ節転移を強く疑う場合、穿刺吸引細胞診(Fine Needle Aspiration, FNA)や開放生検で組織をとって診断が行われます。

で、従来のエコーの機能に、最近、堅さを測るオプションがついたらしい。。。
(と聞いたのが多分2012年8月ぐらい)
 

今回、勤務先で使用できたのはSEIMENS社のもの。従来、硬さを測るエラストグラフィーは、エコープローベを用手的に動かして組織を圧迫して、周囲とのひずみを利用して硬さを推定する形。



新しいデバイスは、Acoustic radiation force impulseという短波?(画像のオレンジのやつ)をターゲットに向けて放ち、そのターゲットからでた横波をトラッキングして、その横波の早さで硬さを推測するらしい。VTTQ(Virtual Touch Tissue Quantification)というシステム。
*詳細は別サイトの方がいいと思います。それかSEIMENS社参照

肝臓や乳腺ではすでに報告が散在してたのですが、頸部リンパ節の評価にはなかったので、とりあえずやっとくかーとやってみました。
 
Acoustic radiation force impulse imaging for reactive and malignant/metastatic cervical lymph nodes.
Ultrasound in Medicine and Biology. Epub 2013 Apr 3.

Fujiwara T, Tomokuni J, Iwanaga K, Ooba S, Haji T. PMID:23562011



結果としてはArea under ROC curveも0.923 (95% CI, 0.842–1.000)とまあまあ。IRBの関係でProspective data collectに厳密にはならなかったのが、ちょっとネックですか、、、
機械が高いのですぐに普及とはならないでしょうが、超音波機械の進歩はすごいです。あと「Ultrasound in Medicine and Biology」のImpact factorが耳鼻科関連より高かったのは、母集団の関係で仕方ないですけど、ちょっとショックでした。



2013年6月3日月曜日

第一回 EBMワークショップ in 愛媛

先週末はEBMワークショップ in 愛媛。無事に終了しました。
EBMに関して、
 1.情報をどのように手に入れるのか
 2.手に入れた論文をどのように現場で応用するのか
 3.診断の際にどうEBMを使用するのか
といった内容でした。

今回、2.論文の現場での応用、批判的吟味では、C.difficle関連腸炎に対する便注入療法。ランダム化比較試験として試験デザインはしっかりしてて、効果もよさそう。適応患者がいればやってみてもよさそうでした。
ただ、日本での報告はなさそうで、実際に注入する便をどのように調整するのか、誰がどこで調整するのか?といった問題は残ります。自分でやるには障壁がありそうです。(本当に他に手段がなかったら手を出すかな)

情報をどのように手に入れるか?
では情報の種類(Foreground / Background question)、情報の種類(一次資料 / 二次資料)について説明のあと、Pubmed, DynaMed, UpToDateについて説明。
医療者は忙しいし、英語の壁もあるし、いかに短い時間で楽に情報を手に入れるか、ってとこが強調されてました。
個人的にMeta-analysisなどに興味があるので、漏れのない情報検索ばかりしてたので、いかに短時間でやるか、という発想は新鮮でした。









2013年5月19日日曜日

マダニ?

知っていると、見たことがあると、治したことがある大違い。
少し前に(2013年2月ぐらい?)に話題になったダニ感染。

ダニは皮膚にしっかり食い込んでるので、頭近くを鑷子で把持して、ゆっくり引っ張って取り除く。ダニの頭がつぶれたり、ねじったりするとややこしくなるよう。表皮切開・皮膚ごと除去したってブログの報告も。


重症血小板減少症候群はダニ咬傷(?)後、1〜2週間の潜伏期で発症。
症状は
 原因不明の発熱
 消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が中心です。
が中心で、時々
 頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)
 リンパ節腫脹、呼吸器症状(咳など)、出血症状(紫斑、下血)
なども生じるみたいです。

ダニをとって1−2週で上記症状があれば、受診してもらったほうがよさそうです。



2013年5月14日火曜日

CAST study @ 愛大、学生EBM

治療薬の効果って何?
治療効果って何?
その疑問に応えるのに、よく使用・引用されるCAST study
Cardiac Arrhythmia Suppression Trial)を今回は読んでみました。
1980年代に、心筋梗塞後の心室性不整脈があると死亡率が高いことは分かっていました。病態生理から、じゃあ不整脈をなくせばいいんじゃない!?ってことで抗不整脈薬が使用され、実際、抗不整脈薬により不整脈は抑制されていたようです。



ところで、抗不整脈薬の目的って何?
不整脈をなくすこと?
それとも、不整脈による死亡を減らすこと?

1989年に報告されたCAST studyは、抗不整脈薬(当時使用されたflecainidem、encainide)は不整脈は減らすけど、死亡率は上昇させてしまう、というショッキングなRCTでした。この論文以降、不整脈対策の治療において治療効果の判定をする場合、「不整脈の減少」を掲げることに慎重にならざるを得なくなりました。

Preliminary report: effect of encainide and flecainide on mortality in randomized trial of arrhythmia suppression after myocardial infarction. The Cardiac Arrhythmia Suppression Trial (CAST) Investigators.
NEJM 1989 ;321:406-412

よくEBM関連の記事で取り上げられるので、内容は知っていたのですが、実際に一度は読まないとなーと思ったのですが、ランダム化の仕方やブラインド方法など、厳密に記載されていて、1980年代には、こんなちゃんとした臨床試験が既にあったのね・・・とちょっとショックでした。

現在は不整脈を減らす方法として、埋め込み型除細動器が一般的であり、それにより不整脈を減らし、死亡率が低下してるようです。治療の効果を判定する上では、治療効果の判定は何ですべきか?を明確にしないと、思わぬ落とし穴にはまるみたいです。

2013年5月5日日曜日

6/1-2の題材

6月1−2日のEBMワークショップ in 愛媛大学で使用する論文を探しています。

論文の批判的吟味を予定していて、治療効果に関するヤツを探してます。ランダム化比較試験、またはランダム化比較試験のメタアナリシスでどれを使うか・・・。愛媛大学医学部で開催するので、医学部学生〜研修医が一番のターゲットかなと思うので、できればランダム化試験がいいなぁと。

最新論文を読んで吟味ってのがEBMらしくない?

なんて。

ってことで、比較的有名な雑誌で、最近で、かつランダム化試験をばばっと眺めますが・・・

  検査オーダー時に、検査の値段を提示すると検査施行率が減るか?(JAMA)

 Impact of Providing Fee Data on Laboratory Test Ordering: A Controlled Clinical Trial.
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23588900

医療の質とかが気になっている、最近の自分の趣向が入ってそうです。
最初に読むランダム化比較試験にしては、ちょっと分かりにくいか・・・。

 糞便注入療法は反復性の偽膜性腸炎を減らす(NEJM)
 Duodenal infusion of donor feces for recurrent Clostridium difficile.
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23323867

このあたりは、治療内容自体もインパクトはあるし、偽膜性腸炎自体も
学生や研修医に(比較的)なじみがあるかも。

 検査オーダー時に、検査の値段を提示すると検査施行率が減るか?(JAMA)
 Impact of Providing Fee Data on Laboratory Test Ordering: A Controlled Clinical Trial.
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23588900

この論文も面白そうです。ちょっと話題になったし。
今回お呼びする講師の先生が、他のワークショップで使用されてるのがネック。

2013年4月30日火曜日

EBM workshop in 愛媛

愛媛大学医学部でEBMワークショップを開催します!!!
(僕はお手伝いで参加予定です。)


近年,医療を取り巻く情報は増大の一途です.
医療従事者として,これらの情報を客観的かつ正確に評価し利用することは,
質の高い医療を提供することにおいて重要なスキルとなります.
EBM(根拠に基づいた医療)は日々の業務に医療情報を効率よく役立てるための最適ツールです.
今回,EBMを全体的に学ぶためのワークショップを企画しました.
臨床医学論文を各グループで吟味し,その適用を考えるワークショップを企画しましたので、ぜひご参加ください。
2日間の参加は無理という方も、1日だけの参加もウェルカムです!

対象:
医療系学生・研修医,医療従事者(学年、EBMの経験は問いません!)

日時:平成25年6月1日(土)~2日(日)

場所:愛媛大学医学部 http://www.new-urakami-hotel.jp/
   東道後のそらともり http://www.soratomori.jp/reserv.html
スケジュール:6月1日(土)
 12:30~13:00受付
 13:00~14:30 疑問の定式化~文献検索(会場:愛媛大学医学部)
  ※主催側でPC(インターネット、UpToDateアクセス可)を準備しています。
 14:45~18:45 原著論文の批判的吟味(会場:愛媛大学医学部)
 19:30~22:30 懇親会(会場:東道後のそらともり)
6月2日(日)
 09:00~12:00 診断におけるEBM(会場:東道後のそらともり?)
講師 南郷 栄秀先生 東京北社会保険病院 総合診療科
参加費
 一般1000円(学生500円)
 懇親会参加費(希望者)6000円(宿泊の方は5500円)
 宿泊費(希望者)8500円
申込方法:
 申込フォーム: http://my.formman.com/form/pc/1EnefI3ZRjVAEQAE/
 またはtakashi.fujiwara.71@facebook.com(藤原)まで、名前(ふりがな)、所属(病院、大学、学部など)、性別、参加(1日目のみ、2日目のみ、両日)、懇親会参加の有無、宿泊の有無、メールアドレス(PC)、メールアドレス(携帯)、その他聞いておきたいこと、を記載してメールください。

ご不明な点がありましたら、以下のアドレスにお問い合わせください。
takashi.fujiwara.71@facebook.com(担当:藤原崇志)

主催:愛媛大学地域医療学講座
http://www.m.ehime-u.ac.jp/school/community.med/?page_id=49

2013年2月14日木曜日

抗インフルエンザ薬の効果は?

学生との抄読会。やはり身近な話題がよいかなということで抗インフルエンザ薬の効果について。一般的に、発症48時間以内でなければ意味はないというのは、医療者の中では広まっていますが、じゃあその効果はどういうものなのか?

今回の題材はこれにしました。ランダム化比較試験は何本か読んだので、メタアナリシスに挑戦。いくつかメタアナリシスあったうち、大学からアクセス可能なものを選択。

Efficacy and safety of oseltamivir in treatment of acute influenza: a randomised controlled trial. Neuraminidase Inhibitor Flu Treatment Investigator Group.
Nicholson KG, et al. Lancet. 2000 May 27;355(9218):1845-50. PMID: 10866439


チェックポイントはざっと飛ばして、Figure 5に注目。
だいたい35時間ぐらい、症状消失までの期間が身近くなるのか。
おおざっぱにいえば、1-2日早く治るぐらい。

インフルエンザは国によっては病院にいかずに自宅で治すところもある。伝聞なので正直、気になる方は調べて下さい。

日本で病院にいくメリットは、解熱薬と抗インフルエンザ薬がもらえること。(解熱鎮痛薬は薬局でも手に入ることを考えると、抗インフルエンザ薬がもらえる点ぐらいか)

デメリットは、個人としては初診料や処方量などの医療費がかかること。薬の副作用(ほとんどゼロでしょうが)。個人以外としては、インフルエンザが周囲にばらまかれること。
若い人だと、時々、抗インフルエンザ薬を処方せずに様子みたいという方もいるので、どの程度のメリット・デメリットなのかは知っておいて損はないかなと思ったので、自分にとっても知識の確認になった。なるほど。

2013年2月11日月曜日

論文よむ用の本

学生との抄読会用の参考資料。
Meta-analysisに関する本ですが、、、


ハイパーリンクし損ねましたが、
CASP workshopに研修医1年の冬にいった時にすすめられました。
最初に読むには、非常に薄くて分かりやすい本でした。
興味があれば読んでみて下さい。

個人的に今はまっている(というか読まないとな、と思っている)本。以前に100ページぐらいよんで、それ以降、meta-analysisする機会もないので、本棚で眠ってますが。
Systematic reviewおよびmeta-analysisする人向けの実践書です。細かい知識も肉付けされるので、興味あればどうぞー。