2013年7月31日水曜日

抹消性顔面神経麻痺、疫学

● 顔面神経麻痺の原因

脳血管障害などで、症状のひとつとして中枢性顔面神経麻痺が生じる場合、疾患全体像としてとらえられる。そのため、大学病院などの顔面神経専門外来などでは、中枢性疾患よりは顔面神経のみ損傷された抹消性顔面神経麻痺が対象となることが多い。

抹消性顔面神経 全体のうち、ヘルペスウイルスが関与しているとされるBell麻痺およびHunt症候群がそれぞれ、60〜70%、10〜15%程度と大半を占める。ただ、抹消顔面神経麻痺の疫学データは、大学病院などの顔面神経専門外来がベースとなっていることが多く、外傷性や腫瘍性など比較的マレな疾患が相対的に多く含まれている可能性がある。そのため、実際の発症割合としては、Bell麻痺やHunt症候群がもっと多く占める可能性がある。


2013年、ソウルで行われた国際耳鼻咽喉科学会 IFOS(International Federation of Oto-Rhino-Laryngological Society)でのYanagihara N.の疫学報告(大学病院の専門外来での割合)だと




・・・過去20年ぐらいで外傷性顔面神経麻痺の割合は減ってきてBell麻痺やHunt症候群が増えんだよなー。

1970年ぐらいの論文を読んでると、Bell麻痺の原因もよく分からないし、治療もよく分からないから側頭骨の手術してみたりしている。そういう時代だと、開業医でみれる顔面神経麻痺の疾患は少なく、今以上に大学病院でBell麻痺やHunt症候群をみていたはず。

それがここ20年なら、Bell麻痺やHunt症候群なら開業医でみれることが分かっているわけで。で、どっちかというとBell麻痺やHunt症候群の割合は減ると思うだけど、それでも外傷性の割合が減っているってことは、かなり外傷性顔面神経麻痺は減ってるんだろうな。


2014/01/06 Memo






2013年7月13日土曜日

統計学的 結果の記載

統計学的結果をどう記載するか。

治療効果や、診断精度の研究において。
p 値がすごい大事だなーと思ってましたが、p 値を算出するのではなく、今は点推定値と信頼区間を示すことが大事なんだなと。

p 値にこだわってれば、Discussionはstatistical significantって書いて、Yes or No !みたいな書き方してたけど。点推定値と信頼区間で話をすると、その結果をどう臨床に適応するかといった話がすごい曖昧になるので、難しい。
外的妥当性をどう考えるか、日本語でもしゃべりにくいのに、英語で書くのは難しい。日本の現状と、海外の現状が一致してるかどうか知識がないのも問題。


まあ、それはさておき、p 値 が0.05未満じゃなった時。どんな英語が使われてるかまとめてみたサイト。よく集めたな。。。


http://bigthink.com/neurobonkers/a-borderline-definite-marginally-mild-notably-numerically-increasing-suggestively-verging-on-significant-result

頭部扁平上皮癌、放射線治療後の遠隔転移リスク


頭頸部扁平状悲願の局所コントロールと、遠隔転移について。
放射線(科学)療法後(Radiotexerapy: RT)の患者に限ってなので、手術するか放射線治療するか施設により判断が異なるので、自施設でも結果を適応できるか分かりませんが。


Dragovic AF,  et al. 
Locoregional failure and the risk of distant metastasis after modern radiotherapy for head and neck cancer.
Head Neck. 2013 ;35:381-7. PMID 

22407986



背景:
 RTで治療した患者の遠隔転移のリスクは局所再発。ここ20年で治療の進歩(化学療法など)があり、遠隔転移のリスクがどうなったか評価する。
方法:
 Retrospective analysis(1995〜2007年に治療)
 根治的RT(±化学療法)の560人,上咽頭・副鼻腔癌は除外、術語も除外
 化学療法の大半はプラチナ製剤
結果:
 StageⅢ、Ⅳが83%
 (T1/2/3/4 = 10/29/30/31%, N0/1/2/3 = 33/14/44/9%)

 多変量解析の結果
 リンパ節転移のステージ、局所制御が遠隔転移のリスクファクターだった。


 縦軸は50%が下限でかかれてて、Note the break in the scale at 0.5 on the Y-axis.こういういう書き方するんですね。親切な気がしました。

 治療後、外来でいつ画像検査するかとか考えますが、参考になります。2年ぐらいすると遠隔転移も落ち着くんですかね。

2013年7月12日金曜日

外科医が手術室で身につけるものと創部感染の関係について。総説、過去のまとめ。20ページ、読み進めたいが、心が折れる。


Eisen DBSurgeon's garb and infection control: what's the evidence?J Am Acad Dermatol. 2011 ;64:960.e1-20


● 手袋は大事。
1988年代ですけど、手袋でヘルニア再建の術後感染が29%から0.55%減少とも。
(Geelhoed GW. The pre-Halstedian and post-Halstedian history of the surgical rubber glove. Surg Gynecol Obstet 1988; 167:350-6)

● ガウンも大事。
(でも素材によるみたいと)

● マスクや帽子の影響はよく分かっていないみたい。


当たり前ですけど、手袋やガウンがない時代は、素手で手術するわけで。

耳鼻科は他科と比べると感染防御が甘めかな、多分。まあ、耳、鼻、喉のオペなんて不潔でしかないもんな。外来における患者分泌物による暴露率は結構高いような気がする。

2013年7月6日土曜日

医師らはどのように死ぬか



以前に話題になった記事ですが、メモとして。
別のサイトからの翻訳ですけど、記事の最初・・・

数年前、チャーリー(尊敬される整形外科医であり、よき師でもある)は、胃にしこりをみつけ、外科医にその場所を検査してもらった。そして、検査の結果は膵癌であると診断された。検査した医師は国内でも優秀な外科医の1人で、生存の可能性を5パーセント〜15パーセント、5年間の生存の可能性を3倍に引き上げる画期的な治療法をも考案した人物だったが、それでもチャーリーは無関心だった。

翌日帰宅した彼は仕事を手じまいし、2度と病院へ足を踏み入れる事はなかった。彼は家族と共により心地よく、出来るだけ長い時間を過ごす事に決めたのだ。それから、数ヶ月後に彼は自宅で亡くなった。彼は化学療法、放射線療法、手術療法を行わなかった為、保険制度は彼にあまりお金を費やす事はなかった。



医者の方が現実の医療の限界を知っていて、治療が難しいと判断したら早期にあきらめてしまうのかな。あきらめるというより、死を受け入れて、素敵な(?)最後を迎えたいと考え、実行する。

医者の親族から、「助からないと思ったら、何も治療介入はしないでくれ」
みたいな相談を、冗談まじりでされたことはある。
医者は非医療者に比べて、医療介入の治療効果をoverestimateすることは稀だと思う。
逆に、治ると判断した場合の、介入の副作用はunderestimateしてる気もする。

Hope the best, prepare the worst.

一方で、効果がないと思ってる治療でも患者に提示してる医療者・・・
という記事の中の記載。
まあ、そうだよねと、あまり否定はできない。患者の判断にどこまで踏み込むかは難しい。




2013年7月4日木曜日

急性喉頭蓋炎、Cyst除外のCT

急性喉頭蓋炎の原因、合併に喉頭蓋嚢胞cystが時々関与します。
で、急性喉頭蓋炎で全例にCTをしてcystを探しにいったらどうでしょう?的な論文。



“喉頭蓋炎にcystを合併すると予後が不良なのでCTで見つけることが大事!”
・・・ってのが元々の趣旨ですが、現実的にcystがあろうがなかろうが、喉頭蓋炎のmanagementが変わるか?と言われるとあまり変わる実感はないし。
(施設間格差の影響は大きいでしょうが)。


Although the mortality of epiglottic abscess was previously reported to be as high as 30%, recent studies have reported a significant improvement reporting mortalities of 7%, close to the mortality rate in cases of epiglottitis without an abscess.


って書き方ですが、mortalityがcystあると30%ってあるけど(今は7%ぐらいとありますが)、そこまで予後が悪い疾患じゃないだろうにと個人的には思います。

治療過程で喉頭蓋の腫脹が引いていく段階で、目立ったcystがあれば気づき、その時点でCT➡場合によりcystに対して穿刺吸引/切開排膿で、そこまでmortalityに差はでないんじゃないかな、と感じます。
(この論文を読んで、Koreaとかは初診時にCTがroutineになったりするのかな・・・)


ちなみに、Katori分類でgradeがⅢ度となるほどcyst合併が多いとのこと。まあ、cystがある時点でⅡ度〜Ⅲ度になるから当たり前ですが、確認するのは大事ですね。